
よし、明日も自転車に乗ろう!(4点)
幼い日の昇平と草太にとって、自転車はまさに「銀色に輝く翼」でした。4歳から30歳に至る長い歳月の中で、彼らの青春と成長の歩みには、必ず自転車が影のように寄り添っています。チーム・ロードでインター・ハイを目指し、強豪の猛者どもと競り合ってシャカリキにクランクを回した日。挫折と失恋の痛みを胸に、ひたすらに日本海を目指して峠を越えた夏。彼らにとって、自転車とは己の強さと弱さを示す鏡であり、また若い喜びと痛みをぶつけられる尊い存在ですらあります。幾度かの紆余曲折を経ながらも、彼らは自転車と共に大人への道を駆け抜け、また、それにつれて自転車を通じた人の輪は拡がっていくのでした。
堂々400頁を超える長編ですが、語り口のテンポの良さとスピード感のあるストーリで、文字通り「あっ」という間に読み終えてしまったような気がします。自転車に乗ることの楽しさがよく描かれているほか、主人公たちの成長を見守る著者の視線はとても優しく、爽快で気持ちの良い物語でした。
今年40歳の小生ですが、思わず感情移入してしまってたいへんです。よし、明日は晴だ。また自転車に乗るぞ!
自力で前に進む(5点)
人生そのものが自転車だ。
物語は長い年月のトンネルを、前へ前へと進む。
本文中で書かれている様に、自転車にはバックギアはなく、
時間を戻す事は出来ないし、文字道理、自力で進むしかない。
「特訓山」で培われた昇平と草太の根性は、自転車部にも引き継がれ、
その後も、困難にぶつかっても、前に進む事をあきらめる事はなかった。
それぞれが、前に進んだ結果、着実に道が開ける。
道とは、人の輪であったり、恋愛の成就であったり、司法試験合格であったりする。
淡々とした、この物語は何と爽快なんだろう。
最後にもたらされるものは、幸福と、その予感だ。
それは、単に作品の中だけの話ではない。
読者にも、最大級の幸福をもたらす。
遡れば、自転車によって運ばれた、幸福の味は格別だ。
好きなもので培った絆は強い(5点)
自信を持って人にすすめられる本に出会えました。 読んでいてこんなにすがすがしい気持ちになれた本は久しぶりです。 成長小説はたくさん読んできたけど、「自転車」というアイテムにこだわった点が何より見事でした。昇平と草太の出会いは4歳の時。 補助輪なしでの自転車乗りの練習をしていた昇平が、坂道の猛スピードで草太の家の生垣に突っ込んだ日から、29歳になり300キロの自転車ラリーに出るまでの25年間を描いているのですが、二人の人生の節目には必ず自転車があるのです。 同級生たちに差をつけるために坂道で怖がらずに自転車に乗るための特訓をしたこと、海まで何時間もかけてサイクリングしたこと、高校で自分たちで自転車部を発足したこと、東京で暮らし始めるために東京まで自転車上京したこと・・・二人の青春にはいつも自転車がある。自転車によって人間関係も開かれた。好きなものでつながっている人々の連帯感ってやはりすごいですよね。 忘れてならないのが、二人と中学校で出会う伸男。 この作品の3人めの主人公。第3の男。 自転車屋のおじさんを持つ彼は、二人の自転車のメンテを手掛けます。この作品においても重要な存在です。後半に唯一、彼をメインに描く章があるのですが、そこから最後まで私の涙腺は開きっぱなしでした。 ラストの連帯感は爽快です! 「悲しい」とか「かわいそう」ではなく、「感動」で泣ける小説でした。 |