
恋愛が教えてくれる人生の生き方(5点)
この本を読んで恋愛の深さに気付かされました。 物語はたんなる物語ではなく人生を描き切っています。 恋愛感情を見事に描いていて、そこから変化していく人間模様に僕は乃めり込んでいきました。現在僕はアメリカに留学していますが、上海留学生活の話ではかなり共鳴するものがありました。 どこに行っても日本人はいて、複雑なくせに薄っぺらい人間関係に苦しみ、自分もその中に入り込み、自分の世界を構築していけなくなるんです。 何かを失い、それから段々と、自分の大切にしてきたものがどうでもよくなってきちゃう。 今まで自分の周りにあったものから逃げてきても,そこに自分が存在すればなにも変らない。 嫌いな自分を変えるしかない事がわかっていても何も変えられない。 ただ諦るだけ。 いま自分は恋愛をしていますが、愛から生まれる嫉妬と憎しみの苦しさ、いまそれが何かをこの小説を読んで理解しました。 恋愛とは人生において生きるヒントではないかと思います。 今後の恋愛に行かしていきたいと思います。
70年の月日と2組の男女(4点)
面白おかしく。幽霊から始まったのは苦笑したが、読後と印象は違う。読後感は爽快だった。 広野有子は全てを捨て、日本から上海に留学した。まずまずの業績を残し夜会社を辞め、元恋人だった松村行生に別れの手紙を送り、日本人寮に住んだ。そして表れた幽霊は大叔父の質。70年前同じ上海での質と浪子の想いが現代を通して交錯する。対照的な男女の織りなすミステリチックでもある恋愛小説。 桐野夏生と言えば彼女らしい。終わり方が何とも中途半端な小説(有子と行生は決着していない)だからでもあるし、玉蘭という本作の重要なポイントは最後まで貫いている。有子にとってそれは眩しすぎた。質と浪子にとっては、自分たちの花とでも言うのか。それが70年後質の幽霊を出現させるきっかけにもなったのだろうが。 読み終わっても分からないであやふやな点が多い。おそらく故意だろうし、ミステリーというミステリーでもないから中途半端な終わり方は別にルール違反でもない。故意ならそれはそれで作風である。 単行本版は、文庫版の後書きによると第六章の行生の内面描写で終わったらしい。文庫版はエピローグ的なものとして質が日本に帰っての事を書いている。文庫の方がいいだろうな。このエピローグ的な内容がないと終わりにくいだろう。中途半端とは言ってもこの終わり方なら納得は行く。だからこそ読後感は爽快だった。 有子の意思が分かりにくいかな。主人公は、いないに等しいかな。有子と質と言っても無理はないけれど、4人それぞれがそのまま動くのがストーリーの流れ。特に目立った人物は必要ない。4人が書ければいいと言った感じかな。 前作「光源」も異色だったように本作も桐野夏生と踏まえれば異色だ。しかし本作は楽しかった気もする。前者はダラダラとつまらなかったが、本作は違うように思えた。
地味だが読む価値のある本(5点)
タイトルと内容があまり一致しない。読む前のイメージは、中国が舞台の、中国人と日本人が半分ずつくらい登場する、中国近代史を絡めたストーリーというものだったが、当然というべきか、実際のストーリーは、それとはまったく異なるものだった。 主人公は、広野有子という女性である。彼女は地方から東京の大学に入り、東京の会社に就職した。有子は、地元ではまぎれもない優等生だったが、東京に出て愕然とする。東京で、彼女はありふれた人間の一人にすぎなかった。 三十歳のとき、有子はつきあっていた男と別れ、仕事をやめ、中国語をマスターするために上海にやって来た。新しい世界に飛び込んだつもりだったが、上海の生活は、日本の生活よりももっと閉鎖的な、息苦しいものだった。 有子の生活の中心は語学教室と寮の往復だが、寮内の日本人グループの中で、有子は孤立した存在だった。そんな有子の部屋に、夜中訪れる人が現れた。それは、昔上海で失踪した彼女の大伯父だった。 これは、胸が苦しくなるような、恋愛小説である。 |