
社会保障を考える上で必要な情報が凝縮された良書(5点)
出版は古いが、原理的説明に徹しているので、社会保障の概念を理解するのに現在でも大いに役立つ。なにより、とても整理された文章で読みやすく、わかりやすい。
まず社会保障の役割を「リスク分散」と「所得の再分配」に大まかに定義する。また、社会保障を「財政」と「供給」(病院や介護施設など)に分類し、両者を提供する主体にそれぞれ公と私があると説明する。更にそれらの類型を詳細に説明して、それぞれの選択を社会状況に合わせて行う必要があると説く。
社会保障と環境被害対策の類似性を指摘して、社会とのかかわりの理解を助ける。また市場や共同体と社会保障との関係もわかりやすく説明されている。
これを読めば「病床数が削減されて老人が病院から締め出されている。可哀想だ。」というマスコミ論評の底の浅さを理解できる。
実践へ(5点)
私は、人文社会系の編入に役立つかな?と思って購入したのですが、誰もが感じているんではないでしょうか?日本に生きていて息苦しさというか、閉塞感というか… 原因は言い知れぬ不安。その部分を、ずばっと言ってくれている作品です。社会保障とありますが、現代日本と言ってもいいくらいの広い視点で書いてくれています。 そして、問題点に関する筆者なりの解決策も書いています。言われてみるとなるほどという内容ばかりなのですが、現状は実践されていないことばかり。 私は政治にほとんど関わっていないのですが、一個ずつ実践に移せば日本は変わっていくのではないでしょうか?視野が広がるといいますかいろいろ考えさせてくれて、心がちょっと明るくなる名著だと思います。
よくまとまっている(4点)
一章は福祉国家の歴史と比較制度論.二章は日本の現行「社会保障(医療・福祉・年金)」制度の解説.三章は著者なりの社会保障哲学論.四章は三章までの要約と結論となる改革案の提言. 著者の根底に「現在社会保障の制度改革に関する議論が(略)タテワリ式に,しかも最終的な将来像の提示なく,なし崩し的に行われている現状を見ると,いままさに必要なのがこうした社会保障全体の将来像に関する議論ではないだろうか」(p203)という問題意識があるため,本書では具体的な制度論と同じ位,理念レベルの議論にも紙幅を費やしている(ちなみに著者は,実証をメインに据えた本を別に書いている). 著者の改革案を一言で言えば,公的年金は大幅な縮小・民営化,医療と福祉については給付範囲は維持しつつ! !! 争原理を導入しできる限り効率化というものだが,上述の問題意識を踏まえた上で,独自の福祉国家論から順順に説き起こしている.理由付けには説得力があるし,もちろん各種統計なども豊富に引用されている. 「社会保障」と一言で言っても,個別の制度は,リスクの分散や所得再分配など,実のところ異なる機能を主目的としている.個別の制度が何を目的としているのかを把握した上で,トータルな視点で原則論から制度を再構築することが,今,政治に求められている.本書を読むとそのことが理解できるだろう. |