
規範と欲動分裂の70年、消費社会の台頭を描く(5点)
本書の論点は、けっしてオリジナルではない。いやオリジナルでないからこそ、重要である。本書の内容からいったん離れるが、1970年とは、資本主義の転換の時代であった。そしてそれと対照関係にあった共産圏が、資本主義・消費文化との対抗をめぐって、引き裂かれていく時代だった。文革はそのバックラッシュであり、そしてクライマックスはポルポトの大虐殺だった。規範的な解放理念と、内面からつきあげてくる欲望=消費感覚との軋轢、そこから連合赤軍における「少女」をつきとめようとする本書のアプローチは、解放理念は規範的ながらも、しかし実は個人主義的な理念につきうごかされていた68年の運動全般にあてはまる論点だとおもう。そしてフェミニズムは、この規範・自制・禁欲と、個人主義、欲動肯定なもの、この二つに分裂しつつ展開しているのではないだろうか(よかれあしかれこの二つをつなぎとめているのは、本書にも登場する上野千鶴子である)。
「事件」のあと、後者の欲望肯定が全面化した日本社会は、消費文化=おたく文化が席巻した。いまや解放理念は「嗤い」の対象になりはてた。しかしその末路あらわれたのは、ネオ・リベラリズムにあまりにも免疫がない社会だった。昨今大塚が憲法をはじめとする「理念」を強調するのは、こうした危機感のあらわれからだろう。
興味があるなら、読んで損はない。(5点)
まず、第1章は、連合赤軍について最低限の知識を、前提として書かれていることは、買う前に知っておいたほうがいいと思う。その上で、この本は、非常に面白い事件への見方を提供してくれるのだろう。当時の学生運動に関しては、よど号の明日のジョー発言に関するものをはじめとして、サブカルチャーの観点からの解釈が、いろいろ出ているが、この論説も、その中の一編として、地位を占めうるものだろう。第2章は、「彼女たち」の日本国憲法、と題されているが、どちらかというと、サブカルチャーの観点から女性論を述べていくという、作者の得意とするテーマで集められた論集であり、日本国憲法は、その中のひとつのトピックに過ぎない。このテーマの論集としては、手軽で読みやすく、この本は今のところ、入手しやすいので、興味がある人はこの本から初めて損はないと思う。
論説としては散漫。(2点)
「多重人格探偵サイコ」などの原作者による、戦後史観。 「少女民俗学」「「りぼん」の付録と乙女ちっくの時代」と併せて三部作構成を成すそうだ。 タイトルに含まれる「連合赤軍」よりも、サブタイトルの「サブカルチャーと戦後民主主義」が主題に近い。 本書は連合赤軍事件他の戦後の事件、風俗について読者が知識をもっていることを前提に話が進んでいる。 同じ知識ベース、同じ価値観を持つ者たちに限定した語りかけ。これが「おたく」の特徴だろう。 事実から真実を抽象化するのでなく、お気に入りの模様を示す断面を求めて事物をスライスするような論調。 漫画原作では、焦点をランダムに散らすことで独自の雰囲気をかもし出すことに成功しているが、論説ではその散漫さが裏目に出ているように感じた。 同意できる部分は少ないが(私は永田洋子の虐殺は「好きな男への貢物」に見える。勤務先の信金のお金を着服し、男に貢ぐ女性のあり方と重なる。)自分とは異なる意見を読めてまぁ楽しかった。 |