
貴方がこの本で得るもの(5点)
墜落現場。本書のカバーの写真は「みかえり峠」と呼ばれる地点から写されている。 遺族にとって墜落現場が望める最後の場所。それが「みかえり峠」である。 そんなカバー写真から始まる本書は現場の凄惨さをできるだけ忠実に書かれている。 その凄惨さ故に人によっては「気持ちが悪い」と思う人もいるだろう。 しかし、私はわかってもらいたい。 本書は、今生きている人に、生命の重さを感じてもらいたいから書かれたのだ。 それは、決して遺族や被害者を哀れむ鎮魂の書ではない。 死者への哀れみは今生きている人に何かをもたらすわけではないだろう。 しかし、死者を知ることによって生きている人が命の大切さを知りえるならば、話は変わるだろう。 私の好きな言葉にこんな言葉がある。 『あなたが空しく生きた今日は、 昨日死んでいった者が、 あれほど生きたいと願った明日』 日航機123便の事故にも夢を叶わず死んだ人が多くいる。 また家族のため、友人のためにどうしても生きたかったが死んでしまった人も多くいる。 そんな人たちのために私たちができること。 それは一日一日を空しく生きるのではなく、少しでも有意義にしようと努力して生きていくことではないのか? 話は変わるが、本書は1500円と正直、安い本ではない。 しかし、貴方の人生にとって大切なものが得られるならば決して高い投資ではないと思う。レビューを読んでこの本に興味がある人には本書より先に同著者の『墜落遺体』を読むことを推薦する。 本書だけでも、十分感動、または学ぶことができるのだが本書には『墜落遺体』の引用が度々書かれている。 なのでどちらかというと墜落遺体から本書を読んだほうがスムーズな流れで読めるだろう。
人間の生死の表裏(5点)
これは事故の原因の真相を探るのではなく、事故の後処理に関わった人々の心の内を取材した内容です。 遺族、地元の消防団、日航社員、自衛隊、病院関係者、葬儀屋という業種にスポットをあてています。 中でも遺体収容、検死、遺体照合の場面は、胸をしめつけられます。一度に500人以上の部分遺体が散乱する現場、収容された公民館は、安易な"地獄図"という言葉では表現できないほど、想像を絶するものだったと覆われます。 さらに、部分遺体のレントゲンを500枚以上も撮影した技師。不眠不休で墜落現場にヘリポートを作った自衛隊員。 知らなかったのは、日航社員が1人づつ、1遺族の担当となっていたこと。現場付近の旅館、宿泊施設はすべて日航が貸しきり、日常品を大量に買占めて遺族、関係者に不手際のないように努めたそうです。ですが、日航社員はいつも遺族に怒鳴られ、殴られていたということです。 遺族の心情からすれば、愛する家族の命を奪った怒りの対象にでもしていないと、正気を保てなかったのでしょう。 いつも思うのは、新聞、雑誌の記者・カメラマンの無作法です。報道陣はほんとに下らない人種だと思います。人間の職業としては最下層に位置すると思います。人命が関わっているときに、担架を取り囲んで進めなくしてしまうという愚行にいたっては、常識の無い人間がなるべくしてなった職業ともいえます。 庶民に情報を与える使命より、人命を優先する"常識"を持っていただきたい。スクープ、報道を伝える使命より、それが最低限の"人間"としてのマナーではないでしょうか。
忘れてはいけないんです。(5点)
『遺族たち』という章から始まるこの本は事故後15年を経て、 遺された遺族やこの事故に関わった人々の当時の話やその後が 書かれています。 人が、人の姿形を留めないまでに衝撃を受けた中で残った、 愛する遺族に宛てられた遺書。 奇跡の生存者。 捜索にあたった自衛隊。 犠牲者を救うべくヘリからロープで降下した医師と看護士。 そして個人的には一番興味深かった、 この事故後の処理の大きな一端を担ったと言っても過言ではない、 葬儀社の人たち。 その他、社命ではなく犠牲者を弔う為御巣鷹山を整備し続ける日航社員など。 長い年月が流れながら、 関わった人達にいまだに大きく存在しているこの事故。 悲しいという思いだけではなく、決して忘れず自分の今を生きる人達。 読みごたえのある、色々な事を考えさせられる本です。 |