
この頃はまだ・・・(4点)
奥山氏の3冊シリーズの2冊目。
全てにレビューを書いているので参考にして欲しい。
この時点では本当にガンなのだろうか?と疑うほど。事実を受け止めていないというか、焦りがない。
おいしいラーメン店やそば屋に足を運んで『食べること』を楽しみ、バイクに乗ってあちこちをツーリング。
彼が彼なりの「美の追究」に全てをかけていた頃の一冊。
「死ぬ」ということ。(5点)
読み始めたとき、(ご本人や関係者の方々には悪いのだが)奥山氏は
本当にガンなのだろうか?と疑ってしまった。命にタイムリミットがつ
いてしまった事実を受け止めていないというか、焦りがないというか。
しかし、読み進めていくうちに、本当はそうではないことに気づき、
私の人間性の浅はかさに怒りを覚えた。
病巣が広がり、苦痛と痺れと点滴ノイローゼととんでもない同質患者
たちに苦しめられながらも、彼は己の意思と美学を貫こうとしていたの
だ。食欲があるときはおいしいラーメン店やそば屋に足を運んで『食べ
ること』を楽しんでいたし、バイクに乗ってあちこちをツーリングした
りしていた。そして、両親から進められた『ホスピスへの入院』も拒絶
し、自室で自叙伝とも言うべき小説を執筆した。
つまり、彼は彼なりの『人生哲学』を以って『死』と向き合ったとい
うことだ。本書の中で若い頃の彼が知り合いに、
「おいしい話はないか?」
と尋ねたところ、知り合いが、
「『美の追究』をしないのか」
と尋ね返してきたというエピソードがある。彼はモノを作る立場になっ
て気がついたそうだが、ガンを宣告されてガンと向き合っていくうちに
『死に対する哲学と美学』が出来上がっていったのだろう。その過程が
淡々と描かれているのだ。その証拠に、彼と以前同室だった患者の葬式
に参加しなかった――位牌を持っているのが自分の親であることが、葬
式の写真が自分の笑顔であることが、否が応でも想像できたから。死ぬ
ことが怖かったから。奥山氏は心底苦しんでいたのだ!
結局、奥山氏は去年、鬼籍に入られた。
せめて、本書に登場するカール・ハイド氏の言葉通り、彼の落ちてい
った先が光であったことを祈らずにいられない。
生き残る本(5点)
どなたかが「星の評価なんて」ということを書かれておりましたが、その気持ちは凄くわかります。 私も本当なら空欄にでもしたかったのですが、 「星の数で読む読まないを決める」という方がおられても、それはそれで「まず読むこと」が大事だ。 と思ったのでつけさせて頂きました。「31歳ガン漂流」を読み、これを読みました。 比べてみるなら、後のことを綴ったこの本の方が「豊か」でやわらかい。 著者も言うとおり、その違いは「前よりも受け入れた」ことによるのでしょう。 肉体の常態を失われつつも豊かであり続けること。これこそが苦しい「闘い」であり同時に「糧」なんだ・・。 と読みながら何度も思いました。 「人間を保つ」こととは何んだろう。何をもって自分は人なのか。 そういうことを、考えました。 これから先、時間の流れに沿って、この本はどうなるのか。 今は暖か過ぎて、その「まだ熱いほどに暖かいのだ」という意味も含まざるをえないのですが、 もっと年月が経ったとしたらと考えた時--- それでもこれは「生き残る本」だ。とわたしは思いました。 涙して深く胸に刻まれる、というより、自分の纏う空気の中にいつでも含まれてそこに在る。 これは自分にとって、そういう一冊です。 |